
電子機器が私たちの生活やビジネスに深く浸透する中、 ESD( ElectroStatic Discharge:静電気放電)からの電子機器を保護する重要性が一層高まっています。
今回は、電子機器の普及とESD保護の必要性から、±2kVレベルのESD保護が電子機器に対して十分か検討し、効果的なESD保護について説明します。
※本記事は、Semtech Corporation(以下、Semtech)が公開したブログ記事を日本語でわかりやすく解説したものです。
ー目次ー
・電子機器の普及とESD保護の必要性
・コンポーネントレベルのESD保護試験:HBM(Human Body Model:人体モデル)
・システムレベルのIEC 61000-4-2規格
・±2kV ESD保護は電子機器に十分ですか?
・IoTデバイスへのESD保護の実装
・まとめ
・TVSサンプルブック抽選プレゼントのお知らせ
|電子機器の普及とESD保護の必要性
昨今の電子機器の中でも特にIoT(Internet of Things:モノのインターネット)は、センサーやソフトウェアを組み込んだデバイスのネットワークであり、データをクラウドやゲートウェイに共有・分析して、農業や製造業、スマートホームオートメーションなどに応用されています。例えば農業では、IoTセンサーが土壌の水分や栄養素、天気情報を収集し、効率的な灌漑を実現します。電子機器の信頼性と耐久性を確保するためには、ESDやEFT( Electrical Fast Transients:電気的過渡現象)、雷サージなどの脅威からの保護が不可欠です。

ESDを理解する:
静電気を帯びた物体同士が接触すると、電子が移動し急激な電流が流れることがあり、これをESD(Electrostatic discharge:静電気放電)と呼びます。この現象はICに深刻な損傷を与えたり、パフォーマンスを低下させる可能性があります。
ICの±2kV HBM ESD保護能力は、電子機器では部品実装時などの製造工程上のESDが管理された環境(EPA:ESD Protected Area)で最低限必要な保護レベルとなります 。設計やシステムエンジニアにとって重要なのは、使用者が電子機器を通常取り扱う上で±2kV HBMのESD保護が十分かどうかであり、これを理解するにはESD試験モデルの知識が必要です。
|コンポーネントレベルのESD保護試験:
HBM(Human Body Model:人体モデル)
ICはクリーンな製造環境でもESDに対して脆弱であり、処理、組み立て、試験、パッケージングなど全ての製造ステップでESDのリスクが存在します。ICレベルとは、電子回路を構成するIC等の部品1つ1つを指します。半導体業界では、さまざまな試験モデルを使用してICレベルのESD耐性を評価しますが、ここでは最も一般的なHBMを取り上げます。HBMは、静電気放電が管理されたエリア内での人体によって引き起こされる静電気放電レベルに耐える能力をシミュレートするもので、ICやその他電子部品の信頼性を確保します。HBMコンポーネントレベルで使用されるESDガンの試験モデル等価回路を図1に示し、時間軸での電流波形を図2で示します。



|システムレベルのESD保護試験:IEC 61000-4-2規格
*静電気放電(ESD)の試験方法を規定した国際標準
IEC 61000-4-2は、国際的に広く受け入れられている製品に要求されるESD試験規格で、帯電した人体から放電をシミュレートします。HBMより厳格な要件を持ち、実際に人が機器を使用する状況で製品が過渡イベントに耐えられることを試験します。
人体モデルを使用し帯電した人体からの放電をシミュレートします。HBMより厳格な要件を持ち、実際に人が機器を使用する状況で製品が過渡イベントに耐えられることを試験する必要があります。システムレベル試験の等価回路を図3に示し、電流波形を図4に示します。




システムレベルIEC 61000-4-2のシュミレーション回路図3ではコンポーネントレベルのHBMのシュミレーション回路図1と比較してCとRが大きく異なり、結果、電流波形の立ち上がり時間が早く、ピーク電流値が大きくなります。
|±2kV ESD保護は電子機器に十分ですか?
HBM および IEC 61000-4-2 の試験 モデルがわかったので、コンポーネント(IC) レベルとシステム(製品)レベルの両方の試験で ±2kV のピーク電流値を比較して見ましょう。ピーク電流は、IC が ESD 試験に耐えられるかどうかの重要なパラメーターです。表 1 は、ピーク電流データの比較を示しています。この表より±8kV コンポーネントレベル のピーク電流 (5.33A) が ±2kV IEC 61000-4-2 レベル試験 (7.5A) よりも低いことも示しています。
つまり、コンポーネント(IC) がたとえ ±8kV コンポーネントレベルの HBM試験に合格したとしても、システム(電子機器)は±2kV システム レベルの IEC 61000-4-2 試験をパスしない可能性を示しています。



|IoTデバイスへのESD保護の実装
IoTデバイスには、過渡電圧サプレッサ(TVS)ダイオードを使用して、データラインや電源ラインのESD保護が必要です。TVSダイオードは、立ち上がり時間の速い過渡イベント中にインターフェイスを保護し、システムレベルのESDピークを1nsec未満で即座にクランプします。これにより、データポートを高電流から迂回させ、ESDの脅威から保護します。通常の機器動作状態では、高インピーダンスパスを提供し、信号転送に干渉しません。以下はIoTゲートウェイ、センサー、サーバーなどのデバイスのポートとインターフェイスを保護する様々な部位で使用されているESD保護デバイスが示されています(図8)。


Semtechでは図に示されているだけでなく、多種多様な保護デバイスを各種取り揃えています。
|まとめ
Semtechは、高性能で信頼性の高いESD保護素子を提供する業界のリーダーです。
システム設計時には、ぜひSemtechにご連絡ください。
私たちの製品は、あらゆるESDおよびEOS(Electrical Over Stress) イベントからデバイスを確実に保護します。
新光商事は高性能で信頼性の高いESD保護製品を取り扱う、Semtech Corporationのご紹介が可能です。
Semtech Corporationは、様々なアプリケーション向けにシステム保護のソリューションを提供しています。
ESD保護でお困りの方、TVSダイオードをお探しの方は、お気軽にお問い合わせください。